冬の朝、目が覚めると喉がひりつく。
リビングで家族と過ごす時間も、寝室でひとり眠る時間も、乾燥は確実に生活を削っていきます。
そんな時に頼りになるのが、電気ポットの技術を活かした象印のスチーム式加湿器。
ラインナップの中でも人気の EE-TB60 と EE-MB20も似たような姿をしていながら、実は「暮らしの舞台」によって選ぶべき役割が大きく違うのです。
ここでは、電気と自動制御の現場を経験した私の視点から、この2つの違いを整理し、「暮らしに立ち会う一台」を見つけるヒントをお伝えします。
この記事を読むとわかること
- EE-TB60とEE-MB20の性能やサイズの具体的な違い
- 生活シーン別に合うモデルの選び方のポイント
- 購入前に確認しておきたい「買わない理由」と判断基準
象印スチーム式加湿器 EE-TB60とEE-MB20の基本的な違い
2つはよく似た外観でも、任せたい「役割」と「居場所」が異なります。
まずは暮らしの舞台に置いたときの像を描き、そのうえで数字と操作設計を重ねて違いを立体的に捉えていきましょう。
畳数と加湿量で見える「舞台の広さ」
目安の畳数と加湿量は、そのまま適したステージを教えてくれます。
EE-TB60は木造〜10畳・プレハブ〜17畳、最大加湿量は600mL/h。
家族が集まるリビングやダイニングの中心で、部屋の隅々まで湿り気を届ける力があります。
EE-MB20は木造〜3畳・プレハブ〜6畳、最大加湿量は200mL/h(標準)/100mL/h(静音)。
寝室や書斎、ワークスペースなどの小さな空間に向いた設計です。
ステージの広さと過ごす人数を重ね合わせると、どちらが相性の良い相棒かが自然と見えてきます。
主要スペック比較(数字でつかむ違い)
数字は嘘をつきません。
両者の骨格を、ひと目で。
項目 | EE-TB60 | EE-MB20 |
---|---|---|
適用畳数 | 木造:〜10畳 プレハブ:〜17畳 |
木造:〜3畳 プレハブ:〜6畳 |
加湿量 | 600 mL/h | 200 mL/h(標準時) |
タンク容量 | 4.0 L | 1.8 L |
連続加湿時間 | 強:約6h 中:約10h 静音:約20h |
標準:約8h 静音:約16h |
消費電力(加湿時) | 約450 W | 約190 W(標準) 約134 W(静音) |
自動運転 | 温度+湿度センサー搭載 | なし |
タイマー | 入/切タイマー 1〜9時間 | OFFタイマー(2・4時間) |
サイズ | W240×D275×H365mm | W200×D230×H265mm |
出典:
象印 EE-TB60 公式ページ
象印 EE-MB20 公式ページ
操作設計と使いどころ――「任せる」か「シンプルに決める」か
操作の思想も対象の違いを映します。
EE-TB60は温度・湿度センサーを活かした自動運転と、入/切1〜9時間のタイマーで細かく段取り可能。
数字で状況を把握しながら、家族の時間割に合わせて運転を整えられます。
対するEE-MB20は2/4時間のOFFタイマーのみという潔さ。
必要なときに必要な分だけ、音も控えめに小空間をしっとりと。
タンク容量の差(4.0Lと1.8L)は給水の頻度に直結します。
給水という小さなタスクをどれだけ省きたいか――その価値観が、最適解を決めてくれます。
- EE-TB60:リビング中心の生活に合わせ、広さ・人の出入り・家族の体感を総合して整えたいときに。
- EE-MB20:就寝前や作業時間など、静かなひと区間をていねいに潤したいときに。
EE-TB60の特徴|広い部屋をしっかり潤す“大黒柱”
EE-TB60は、象印のスチーム式加湿器の中でも「リビングの主役」と呼びたくなる存在です。
最大加湿量は600mL/h、タンク容量は4.0L。
木造なら10畳、プレハブなら17畳までをカバーする力があります。
センサーと表示で「湿度の見える化」
このモデルの大きな特長は温度と湿度のセンサーを搭載していること。自動で加湿量をコントロールしてくれるため、常に過不足ない潤いを保ちやすい仕組みです。
さらにデジタル表示で湿度を確認できるので、「体感では乾燥している気がするけど、本当は?」という曖昧さを数字で支えてくれます。
見える安心感は、毎日の空気管理を“感覚”から“確信”へ変えてくれるのです。
大容量タンクが生む「暮らしの余裕」
家族が集まるリビングで頻繁に給水を強いられると、それは小さなストレスの積み重ねになります。
EE-TB60の4.0Lタンクは、そのストレスを和らげ、給水回数をぐっと減らします。
「加湿器に気を取られず、家族との会話に集中できる」――そんな暮らしの余裕を生み出すのが、この大容量設計です。
リビングの“大黒柱”としての存在感
スペックを並べれば「パワフル」と一言で済みますが、その実感はもっと情緒的。
空気の乾きに悩む季節、部屋全体をふわりと包む湯気は、ただの湿度ではなく「人の気配」を支える安心感になります。
EE-TB60は、まさに暮らし全体を支える大黒柱。
そばにあるだけで、家の空気が頼もしくなる一台です。
EE-MB20の特徴|小さな空間に寄り添う“静かな相棒”
EE-MB20は、寝室や書斎といった小さな空間専用の加湿器です。
最大加湿量は200mL/hと控えめですが、タンク容量1.8Lで、静音モードなら約16時間も連続運転できます。
コンパクトさが生む「自由な使い勝手」
本体サイズは幅20cm×高さ26.5cmとコンパクト。重量も約2kgと軽いため、部屋から部屋へ気軽に持ち運べます。
「今日は寝室に」「明日は仕事部屋に」と、暮らしの中で場所を選ばず移動できる柔軟さ。収納時にもスペースを取らず、存在感を控えめにしてくれるのも魅力です。
眠りを守る静音設計
就寝時に気になるのは運転音ですが、EE-MB20は約30dBとささやき声ほど。
夜の静けさを壊さず、むしろしっとりとした空気を添えてくれるため、眠りの環境づくりにぴったりです。
「眠っているあいだに静かに働いてくれる」――その安心感は、小型加湿器に求められる大切な資質といえます。
小空間だからこそ活きる一台
EE-MB20は、大きな部屋を潤す力はありません。しかし、それがむしろ役割を明確にしています。
一人で過ごす寝室や書斎、仕事に集中するスペース。そんな限られた小空間においては、このサイズ感と加湿量が心地よく寄り添います。
暮らしの中で大げささを感じさせず、必要な場面にそっと立ち会ってくれる――まさに静かな相棒です。
使い勝手の違い|タイマー・手入れ・電気代の視点から
スペックの差はもちろん大切ですが、実際に毎日そばに置くなら「どんな使い勝手か」が心に残ります。タイマーの自由度、電気代の印象、手入れの気楽さ――この3つの視点で見比べてみましょう。
タイマー機能の違い――暮らしのリズムに合わせるか、シンプルに決めるか
EE-TB60は入/切両方のタイマー(1〜9時間)を搭載しており、生活リズムに細やかに寄り添える設計です。
たとえば「就寝前に3時間運転」「朝の起床に合わせて開始」といった柔軟なコントロールが可能です。
一方、EE-MB20は2時間または4時間のOFFタイマーのみという潔さ。シンプルだからこそ迷わず使え、「使いたい時にパッと動かす」関係性を築けます。
「自由度を重視するか」「シンプルさを好むか」で、選ぶ方向が分かれるポイントです。
電気代の目安――パワーか節約か
加湿時の消費電力は、EE-TB60:約450W、EE-MB20:標準190W/静音134W。
1日8時間使うと、1か月でEE-TB60は千円前後、EE-MB20は数百円程度の電気代になります。
「家族の空間を大きく潤したい」ならEE-TB60、「個人のスペースを静かに潤したい」ならEE-MB20。
パワーと節約、どちらを優先するかで正解は変わります。
手入れのしやすさ――フィルター不要がもたらす軽やかさ
両モデルに共通するのは、フィルター不要設計。
加湿器の手入れで最も面倒なフィルター掃除をしなくてよいのは、暮らしをぐっと軽くしてくれる要素です。
お手入れは週1回程度、クエン酸での洗浄をするだけ。
“掃除の手間が選択肢を狭めない”――この共通点は、象印スチーム式加湿器の大きな強みといえます。
暮らしに合わせた選び方のヒント
数字で見比べれば、EE-TB60とEE-MB20の差は一目瞭然です。けれど実際に選ぶ場面では、「どんな暮らしに立ち会ってほしいか」という問いの方が大切になります。
加湿器はただ湿度を与える機械ではなく、生活のリズムや心地よさを形づくる存在。だからこそ、広さだけでなく生活の動線や自分の性格に照らし合わせて考えることが欠かせません。
家族の中心か、自分だけの空間か
EE-TB60は、大きなタンクとパワフルな加湿力を武器に、リビングの空気をまるごと潤す頼もしい存在です。
一方、EE-MB20は控えめな加湿量だからこそ、寝室や書斎などの小さな空間にしっとりと寄り添います。
家族全員の時間を支えるか、自分だけの時間を守るか。まずはこの大きな分かれ道を意識するだけで、答えが見えてきます。
- リビング全体を潤したい → EE-TB60
- 寝室や書斎など限られた空間で使いたい → EE-MB20
性格や習慣に合わせる視点
「給水を忘れがち」「こまめな作業が苦手」という人にとって、EE-TB60の大容量タンクは強い味方になります。逆に「静けさが最優先」「音に敏感で眠りが浅い」という人には、EE-MB20の約30dBという静音性が合っています。
加湿器は毎日使うものだからこそ、自分の小さな癖や習慣と相性が良いかどうかが、満足感を左右します。
- 給水の手間を減らしたい → EE-TB60
- 音の静けさを優先したい → EE-MB20
未来の暮らしを想像する
選ぶときには「今の部屋」だけでなく、「これからの暮らし」にも目を向けたいものです。引っ越しや家族構成の変化で、部屋の広さや生活のスタイルは変わるかもしれません。
リビングの主役として長く働いてもらうのか、あるいは寝室の相棒として役割を果たしてもらうのか。未来の暮らしのシーンを想像すると、自然と最適な一台が浮かび上がってきます。
プロの目で見た「買わない理由」も考えてみる
家電を選ぶとき、どうしても「良い点」ばかりに目が行きがちです。けれども、本当に納得して選ぶにはあえて“買わない理由”を考えることが大切です。
未来の自分が「なぜこれを選ばなかったのか」と説明できるくらいに整理しておけば、選択はより確かなものになります。
EE-TB60が合わないケース
EE-TB60は頼もしい加湿力と大容量タンクを備えていますが、そのぶんサイズも大きめです。
ワンルームや一人暮らしのコンパクトな部屋では、スペースを圧迫して「持て余す存在」になる可能性があります。
力強さが魅力である一方、日常の生活動線に対して大きすぎると感じる人には合わないかもしれません。
EE-MB20が合わないケース
EE-MB20は小さな空間で静かに寄り添う優秀な相棒ですが、加湿力は控えめです。
リビングや家族全員で長時間過ごす空間では「ちょっと物足りない」と感じやすいでしょう。
単身や寝室用には十分でも、「家族の中心に置きたい」と思う人には選びにくいモデルです。
「買わない未来」を描くことの意味
選択肢を広げるのは、スペックの高さではなく自分の暮らしに合わない理由を知ることです。
あえて「この条件なら買わない」と決めておけば、残る選択肢が自分に本当に合ったものになります。
家電を選ぶのは、ただ足し算をすることではなく、引き算をして暮らしにフィットさせる作業でもあるのです。
まとめ
象印のスチーム式加湿器、EE-TB60とEE-MB20。見た目はよく似ていますが、その役割はまったく異なります。
EE-TB60は大容量タンクと力強い加湿量で、家族が集まるリビングの“大黒柱”として部屋全体をしっかり潤します。
一方、EE-MB20はコンパクトで静音性に優れ、寝室や書斎などの小さな空間で静かに寄り添う“相棒”です。
どちらを選ぶかは「どの部屋で、誰と、どんな時間を過ごすか」で自然に決まります。
部屋の広さや価格だけでなく、給水の手間や音の感じ方、未来の暮らしの変化まで想像してみると、より自分に合った一台が見えてくるでしょう。
選ぶという行為は、悩むことではありません。
それは「暮らしに立ち会わせたいかどうか」を見極めること。
湯気のぬくもりに支えられながら、毎日の空気をどんなふうに整えたいのか――その答えが、あなたにとっての最良の加湿器です。
出典:
象印 EE-TB60 公式ページ
象印 EE-MB20 公式ページ
※数値や仕様は公式発表を基に記載していますが、購入前には最新情報を必ずご確認ください。